経絡指圧(ZEN SHIATSU)
独自の経絡説を打ち立てる
増永静人は、指圧の本質を「長い伝統に培われた東洋独自の医療に根拠を置いたもので、人間の本能的な要求に支えられ た技術」であるとし、指圧を習得するには「経絡」の理解を欠かすことはできないと述べている。そして、東洋医学全体の体系の中で指圧をとらえ、独自の真理 追究に則った経絡説を打ち立てた。
アメーバ運動と気の動き
増永静人は、気の動きや体のコリは、アメーバの動きと同じであること、即ち、原形質流動に見出し、昭和49年(1954)このことを「医道の日本」誌に発表した。
「アメーバは、ゾルとゲルとがいつも容易に変化する。アメーバの体だけでなく、われわれの体もそうです。われわれの体もコッて力を入れたりするけれども、
またスッとゾルに戻るわけです。ゲルで仕事をした後はすぐゾルに戻る。戻ればいいんですよ、自由に行き来すれば。コッたやつが戻らなくなるから病気になる
んです。」―増永静人「経絡指圧講義」より―
<増永静人自筆の図をもとに複製したもの>
全身十二経経絡指圧診断治療要図(経絡図)
医王会で用いられている経絡図は、著者増永静人の多年の研究を基にして、何千という患者
の症例を対象に、臨床的に手指で確認されたものである。実際には巾に広狭があり、あるいは時に走向も変化したり、多岐にわたることがあるが、実用的に基準
となる単線で示した。手指でこの線を目標として切診すれば、経絡の虚実が正しく診断され、同時に治療効果も上げることができる。
手・足・頸にそれぞれ全十二経の走向を描き、さらに手の古典的六経を下半身につなぐ走向を発見し、これに手・足・頸の断面図と足底の経絡を示した完全版に解説も補充された。
実際の経絡診断治療に役立つことを目的とし、臨床的な切経の部位と、これに表裏となる十二経絡の腹証・背候診を図示し、さらに独自の経絡伸展法を加えて、経絡別採色によって一目で経絡の全貌が理解できる画期的な図表とした。―増永静人著「切診の手引」より―
また、増永静人は、指圧の独自性は単純な点圧、触診ではなく、漢方四診のうちの「切診」 の技術がそのまま指圧の治療手段であるとした。「切診」は触診のように局部的な異常を見るのでなく、全身状態の診断につながる。そして、証をみる指圧とい うのは、単に病気の症状をとるのでなくて、その人の生活の根底から改善して、正しい方向を歩めるように指示することに目的がある、と述べている。